回路の理解

OSCBase私なりに、この回路を理解した内容は、
1)基本発振回路はフェーズシフタ(90°移相) 2段で180°位相差を作り反転増幅器(位相差180°)を通して正帰還をかけて発振
2)正帰還のためにゲイン-1強の可変ゲインアンプを挿入し発振の安定性を図る 
3)この可変ゲインアンプの増減分を出力に付加して波形改善(歪率の改善)を図る 
4)可変ゲインアンプはその帰還抵抗の一部をCDSの抵抗に置き換えて構成 
5)出力をダイオードの順電圧降下を補償した全波整流回路+LED駆動アンプを通してLEDを駆動する 
6)赤色LEDとCDSは直近に対向して配置し、さらにブラックボックス内に収納して、いわばアナログフォトカプラーを構成 
7)出力→全波整流→LED駆動→CDSの抵抗値→可変ゲインアンプで振幅一定制御のループを構成、移相型とかオールパスフィルタによる発振回路 と言うらしいのです。
一般に発振回路はその安定性を得るために、何らかの振幅制御回路を持ちますが、この回路に依る波形の悪化が多く、この制御回路の作り方で性能が大 きく変わってしまいます。文献やサイトで多く見かける振幅制御回路は出力からRMS値を生成しあるゲインをかけてFETをドライブし、このFET のソース、ドレイン間の抵抗値を制御し、この抵抗を帰還回路などに入れるものですが、RMS変換には必ず積分コンデンサーを必要とします。周波数 毎にこの積分の最適値が異なります。これがやっかいな問題なのです。状態変数型の製作記事やサイトでの紹介はほとんど、この回路で作られています ので、周波数はスポットの固定が多くなっています。今回製作した回路の最大の特長はRMS演算のための積分器を持たないところです。帰還後の発振 周波数の波形をこだわらず、それを後から補償、改善するという考え方がこの回路の特長であろうと思います。

製作

回 路図(PDF)はこちら
前にも書きましたが、発振回路の基本部は、『Low distortion audio-range oscillator』と定数を含めてほぼ同じで、ブロック図的に表現しています。オリジナルからの変更点は発振周波数を決定するCRとロータリーSWの部分 (100Hz、1KHz、10KHzの固定3ノッチ)、出力電圧の半固定VRを3ノッチを独立の調整可能とした部分と周波数微調VR(10回転ヘ リカルボット)です。
回路図には電源回路は記載していません。

OSC全景左 は全景の写真です。
右上はCRユニットでロータリーSW、微調VRも2枚のプリント板の搭載しています。その下は2段のプリント板が上下に重ねられており、上段が発 振基本部、下段が状態変数フィルターです。左側は電源部で非安定の直流入力を受けて、正負2個の3端子レギュレーターで±15Vを作っています。










CRユニット左 はCRユニットの拡大写真です。














フォトカプラー左 は手作りのLED+CDSのアナログフォトカプラーの写真です。小さなユニバーサル基板の切れ端に赤の5mmφのLEDと5mmφのCDSを対向 して搭載し(下側)、それを8mmφ黒色熱収縮チューブで2回覆いました(上側)。これで、充分な暗箱になっているかどうか分かりませんが、全体 をケースに入れてしまうのでOKとしました。


電源部はこちらをご覧くだ さい。<A>パターンです。




シミュレーション

下記に記載のデバイスモデルは稚拙なもので、もう少し精度のよいデバイスモデルを 作りました。(2017/11/13)これからシ ミュレーションしてみるならば、ぜひこちらを使ってください。  こ ちらから

Model製 作する時はいつもその動作をシミュレーションで確認します。その前提として、市販部品ではないアナログフォトカプラーのモデルを実測をべースで考 えました。
左図は何種類か製作したアナログフォトカプラーの内の実際にしようしたものの実測です。x軸はLED電流(mA)、y軸はCDSの抵抗値(Ω)で す。これをEXCELでグラフ化s、近似式を求めました。             y=7.6903*x**-1.002
LEDのダイオード特性については、OSRAM社のSiteからデバイスモデルが入手できます。5mmφ REDの汎用タイプ(LS5436)を選びました。CDSの時定数はあるサイトで、5mmφのCDSは約2mS位とありましたので、CRで構成しました。

LED+CDSフォトカプラー特性測定用定 電流電源はこちら


PhotoCoupler

LTSpiceで表現してみたのが、左図です。いわば、ビヘイビヤモデルということができます。その他の部品のモデルには特別なものはありませ ん。ネットで探せばみつかります。 シミュレーションにて安定に発振することが確認できます。但し、誤差の無い純粋なパーツが基本なので、平衡状態を保ったまま発振しないことがあります。どこかのノードに予 めイニシャル条件として、電圧を与えておくとよいでしょう。
本来、低歪率を謳う発振器なので、歪率もシミュレーションしておきたいのですが、これが結構難しいのです。LTSpiceでは、.fourという コマンドを用いますが、フーリエ解析する周波数を指定しなければなりません。ところが、これが分らないのです。波形からゼロクロス点間の時間を読 み取ってみたりしましたが、必要な精度での判読はできません。少しずつ周波数をずらして何回も試行するしかないのでしょうか。分かったとしても、 純粋な回路なので、極めていい値で観測されてしまいます。動作確認のレベルに留まってしまいました。


低歪率発振器の性能

『WaveSpectra』で測定しました。入力デバイスはCreativeの『Sound Blaster X-Fi Sorround 5.1』。

測定周波数
サンプリング周波数
FFTサンプル数
歪率(フィルター無し)
歪率(フィルター付き)
100Hz
11025Hz
16784
0.05%
0.002%
1kHz
22050Hz
4096
0.0064%
0.00061%
10kHz
96000Hz
2048
0.0047%
0.00236%


フィルター付きでどうにか、実用になるものではないかと思っています。この低歪率発振器は趣味再開後の割と早い時期に作ったもので、今から思うと 作り方が下手です。そのうち作り変えようとは思っていますが、そんなに頻繁に使うものでもないのでそのままになっています。下手なところは、やた らと半固定VRが多いこと、内部アースラインが貧弱なことなどなどです。特に気になっているのは低周波での歪率が高いことです。コンデンサーに もっといいものが必要かもしれません。