Linkvitz-Reily Filter とは


LRBasic基 本はオペアンプを使用したアクティブフィルターのうちで比較的ポピュラーな正帰還形の回路です。Linkvitz-Reily Filterはこの正帰還形を構成する2つのRと2つのCの値の比を左図のように固定化したものです。この比が成立している時、スロープは12dB/octになり、入出力 の位相差atクロスオーバー周波数は±90°
(±はHigh PassとLow Passの意味)になります。
この回路をHigh PassとLow Pass、それぞれ2つカスケードに接続すると、24dB/octのスロープになり、入出力の位相差atクロスオーバー周波数は±180°になります。すなわち、High PassとLow Passの出力は同位相になり、これを直線位相(Linear Phase)と言います。


LRSim
周波数と位相特性を示しているが、左図です。V(l1)はLow pass 1段目、V(l2)は2段目、V(h1)はHigh Pass 1段目、V(h2)は2段目の出力です。点線はそれぞれの位相を示しています。それぞれの2段目の位相特性に着目すると同じカーブになっています。これが直線位 相(Linear Phase)です。





LR12dB




今回の製作では24dB/octのスロープを得ることが目標の一つでしたので、それぞれ2段の構成にしましたが、1段で12dB/octのスロー プのクロスオーバーならば、左図のようにHigh PassとLow Passのいずれかに反転アンプを設ければ、直線位相(Linear Phase)になります。







製作

電源部を除く回路図はこち らから(pdf)
電源部はこちらから <C>のパターンです。

LRXoverPCB

プラグイン式 抵抗ユニットで周波数を可変

左は今回製作したメインボードとプラグイン式抵抗ユニットです。Linkvitz-Reily FilterをHigh PassとLow passをそれぞれ2段、すなわち24dB/octのスロープを得る時、クロスオーバー周波数を決定付けるCとRをそれぞれ同じ値のものにすると、CもRも両ch合わせて 20個ずつ使用します。
周波数を可変にするためには、VRが何と20連のものになるため現実的ではありません。それでもクロスオーバー周波数を変えてみたい時もあるはず です。そこで、プ ラグイン式抵抗ユニットにしてみました。
CはWIMA MKP2 0.033uF、Rは金属皮膜1/4Wです。
Rは11kΩの場合、クロスオーバー周波数は310Hzになります。6.8kΩで500Hz、今はこの二つを作っておきました。
クロスオーバー周波数の310Hzは、今まで聞いてきた中でこの辺りが心地よかったということで決めました。500Hzは今のシステムで中高音用 として使用しているスピーカーの内臓ネットワークのウーファーとスコーカーのクロスオーバー周波数です。500Hzにすると全体として3Wayに なり、完全なBi-Ampのシステムになるはずです。

LRXoverFront
左はこのXoverの前面Viewでシンプルなものです。このL-RCrossoverは、前作の状態変数型Crossoverのケース、電源、 XLR入力部およびローパスフィルター出力部を流用しています。








LRXoverInside
左はこのVoverのInsideViewです。セパレータの上が電源部、右背面側の手前はXLR入力コネクター、その下側にバランス入力基板が あります。










性能測定

Frequency
周波数特性

左は周波数特性を示したものです。理論的な値とよく合致しています。両chはほぼ同等なのでRchのみ表示しています。
これはフリーソフトの『WAVEGENE』と『WAVESPECTRA』で測定したものですが、縦軸のdB値は1V=0dBにはなっていません。 また、分解能の都合上50Hz~20KHzでほぼ正しい測定になっているものと思います。







phase

位相特性

左はクロスオーバー周波数での位相特性を示しています。両chはほぼ同等なのでRchのみ表示しています。
これはフリーソフトの『TRUE RTA』というPCオシロで測定したものです。周波数特性はもの足りませんが、使い易いソフトです。信号源もこの『TRUE RTA』のGenerater機能を使用しています。
上下の波形はハイパス出力とローパス出力を表示したもので、位相が完全に同位相になっていることを示しています。

蛇足ですが、左上の数値はLchの入力(ACRMS電圧)を表示しており、この測定時のローパス出力電圧は548.64mVだったということで す。この表示はAC電圧計として有効に使えます。




歪率特性

これもフリーソフトの『WAVEGENE』と『WAVESPECTRA』で測定したものですが、ハイパス出力は0.5V、1KHzで THD=0.002%、ローパス出力では、0.5V、100HzでTHD=0.006%が得られました。(両ch、ほぼ同等です)




サブソニックフィル ターの追加 と発見したミスの修正

古いLPを再生する時の無音時にウーファーのコーンが振動することがありましたので、サブソニックフィルターを追加しました。
CRフィルター+アクティブフィルターの構成でカットオフ20Hz、18dB/octの性能のものです。左上図の緑線は合成した全域の周波数/位 相特性です。

サブソニックフィルターを追加した結果のLinear Phase性能についてシミュレーションでチェックしました。Linear Phaseを採用する重要なポイントはクロスオーバー周波数近傍で音響空間的なディップを防止することです。クロスオーバー周波数とサブソニックフィルターのカットオフ周 波数が比較的近い175Hzと20Hzでシミュレーションしたものです。100Hz以下でLinear Phase特性からのずれが生じます。しかし、クロスオーバー周波数近傍ではLinear Phase特性になっており、上図で示す合成でもディップは起きていません。サブソニックフィルターを追加したことによる悪影響はありません


   

まことにお恥ずかしい限りですが、バランス入力回路にミスを発見しましたので修正しました。シミュレーションまでやって製作したのですが、シ ミュレーション自体も間違っていました。 バランス入力回路は差動アンプですが、一方の相のみゲイン調整回路を設けていました。ゲイン調整回路のアンプは非反転回路でなければならないので すが、反転回路にしてしまいました。すなわち次段の差動アンプは同相入力になり、ゲイン差があるので差動アンプは同相の差を出力してました。実物 もシミュレーションも回路としては問題なく動作します。音的にどうかという疑問も起きませんでした。意図に合う回路に修正しました。結果、ゲイン 調整は不可になりました。