レストアのポイント

TUBEAMPPHOTO流 用する出力トランスLUX OY15-5は45年程前に購入したものですが、当時このトランスは名器の誉れが高いものでした。しかし、細い線で巻いているため腐食による断線し易いものと言われていま す。巻線抵抗をチェックした結果、少なくとも現在は2個ともに健在の様です。このトランスの1次Zは5kΩですが、6550のDataSheet によれば推奨は3kΩ程度が多いのです。このトランス2次には多くのTap(4‐6-8-10-16Ω)がありましたので、10ΩTapを使い等 価的に4kΩ:8Ωとして使用しました。このトランスのモデルは自作です。真空管モデルはWebsite『Ayumi's Lab』からGetしました。OY15-5 のモデル製作はこちら

出力管の他に、40年経過したアンプの一般的なメンテナンスを実施しました。可変抵抗類および電解コンデンサーの交換をしましたが、カップリン グコンデンサーはすでにフィルムコンであったため交換はしていません。あまり意味は無かったのかもしれませんが、後日、C電源の安定化も実施して あります。


設計とシミュレーション

シミュレーション回路

拡 大図はこちら

上図はシミュレーション回路で、オリジナルはLUXKITのモデル回路です。出力や出力管のプレートに挿入されているWメーターはシミュレーショ ンのためで、実際にはありません。出力トランスOY154SSSSはOY15-5を4kΩ:8Ωで使用した時のモデル名です。電源回路は実際に即 したものに近づけるためにレギュレーションを考慮してあります。各種シミュレーションを実施してみましたが、LUXKITの出来の良さには改めて 感心しました。アマチュアがテスターひとつでそこそこの性能が引き出せるような設計です。AB1級で低帰還(10dB程度)のアンプに仕上がって います。出力トランスの容量的問題から出力の大きさにはこだわっていませんが、シミュレーションではそのロードラインからみると、最大 34.8W、歪率からみると最大28.8W(歪率=0.5% 1kHz)になりました。


出力段のロードライン

ロードライン

最大出力はプレート電圧の最大振幅(上図のA-B)と1次インピーダンスより求めます。Pmax=(Vpmax- Vpmin)**2/(2*Zp-p)より、Pmax=540.410958)**2/(2*4200)=34.78W(ちなみに**2とは2乗 の意味です)左図は4.2kΩの負荷で、Bias=-51.73V、アイドルカレント=75mAとした時のものです。
1次インピーダンス4.2kΩの意味は、OY15-5のモデルの製 作を見て下さい。


初段と位相反転段

初段と位相反転位 相反転段はいわゆるリークムラード形とし、初段は直結してあります。初段のカソード抵抗とパラの電解コンデンサーは入れずにゲインを稼がず電流帰 還としてあります。アンプ全体としては低帰還のアンプとして構成しました。位相反転段のプレート抵抗はそれぞれ30kΩと32.2kΩとしてAC バランスをとってあります。実際の回路では32.2kΩ側は30kΩ+5kΩVRで可調整です。

結果、位相反転段の最大振幅はシミュレーション上で75V程度になりましたが、実用的には60V前後でしょう。






位相反転振幅




















帰還回路の設計

FBVo(緑) はオープンループ、Vc(薄緑)はクローズドループ、VLG(青)はオープンループの周波数特性と位相特性を示しています。
10dBの帰還がかかっており、155kHzあたりでループゲインが0dBになります。その時の位相は、-100°であり位相余裕は80°になり ます。
もともとの回路から帰還の回路定数を変更しました。帰還のコンデサーを470pFから330pFに、高域振動防止用の局部帰還用コンデンサーを 5pFから10pFに。












歪率のシミュレーションと実測

歪率左 図はシミュレーションと実測です。設計的には100Hz 0.5%の歪率で28W。実測でも同様な結果です。 歪率の実測は、私の環境下では、PICO SCOPEを使う方法とWaveGene+WaveSpectraを使う方法があります。左図は後者の方法です。 100Hzと1kHzでは比較的一致していますが、10kHzはあてにならないと思います。入力デバイスの周波数特性はどうみても20kHzまででしょうから、10kHz では2次高調波までしかフーリエ解析できないはずです。値としては少なく(良く)示すはずです。PICO SCOPEによる方法は、入力の分解能は8bitしかないことと、THD+Nが計測できなかったからです。








周波数特性の実測

F特左 図はFB回路の設計で図示しましたシミュレーションの周波数特性より高周波域で盛り上がっています。トランスのモデルがやや違っているようです。 モデルを修正すべきとは思いますが、どうすればよいのかよく分かりません。モデルはモデルですからこれでよしとすべきかもしれませんが。ただ、盛 り上がっていること自体は良くないと思いますので、実際の回路では帰還のCを470pF、高周波振動防止のCを5pFに変更しました。
F特2


C電源の安定化

C安定化音 質的にどうなのかと、疑問をもちつつ回路的興味からC電源を安定化しました。この回路はTI社のブレテンLB-47で詳しく紹介されています。安 価で高圧(~150V位か)の安定化電源が作れます。この回路はNPNをPNPに、ダイオードの極性を逆に、さらにLM317をLM337にすれ ば負の電源もできます。バイアス調整を簡単かつ安定にさせるために本当は負の電源を4回路作りたかったのですが、スペースの問題で挫折しました。

拡大図(pdf)はこちら







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