ベースの基板キット AMP15

AMP15ス エーデンの通販WebSite『41Hz AUDIO』から購入しました。販売時の謳い文句は、
Audiophile sound quality, < 0,008% TDH+N at 2x70 WRMS, 8 ohm でした。
現在この『41Hz AUDIO』というSiteは行方不明です。購入者にしか回路図を公表していませんでしたので、内容を説明しておきます。こ のWeb上では、この部分の詳細回路は示さず、ブロック図的に表現してあります。ほぼ、TripathのData Sheetに記載されている回路をベースにして、
1)電源用ダイオードと電解コンデンサー(27000uFX2)が搭載されています。また、回路上必要なV5やVN10はすべて主電源(VPPや VNN)から生成されていますので、主パワートランスからのみ電源を接続すればOKです。このV5やVN10はトランジスターを使用したプレレ ギュレーターを介しています。(直か落としではドロップ電圧が高すぎるので)
2)出力段MOSFETは2-in-1タイプのIR製 IRF14019H-117P、電源用ダイオードも2-in-1タイプのFairchild製 FEP16DTDという高速ダイオードが使われています。

3)ミューティングリレーとドライブ回路は付いていません。
4)最大の特徴はその構造で、主MOSFETX2、主ダイオードX2、プレレギュレーター用トランジスターX2 はすべてTO220パッケージのデバイスが採用されており、基板下面から約10mmの位置にいわゆるベロの部分の面が下向きに揃っていることです。シャーシーやケースなど に10mmのスペーサーで浮かせて基板を取り付ければ、シャーシーやケースがヒートシンクになるという訳です。(一部絶縁は必要ですが)
工作を簡単にするため、私の製作では、一旦3mmtのアルミ板に基板を取り付けておきました。MOSFETのベロは絶縁型なのでそのまま、プレレ ギュレーター用トランジスターとダイオードは非絶縁型なので絶縁シートや絶縁ブッシュなどを介してアルミ板に取り付けてあります。このアルミ板は シャーシーに直付けします。


概要

DAMP2BLOCK左 図は機能ブロック図です。TripathのTA3020は入力段のAMPが単電源(5V)のオペアンプで構成されていますので、直結しようとする と、信号振幅の中心は2.5Vにオフセットされていなければなりません。Data Sheetでは入力にコンデンサーを入れて直流分をカットしています。
このコンデンサーを無くしてDCアンプとするための回路が、左図のHead AmpとDC Servoの部分です。DC Servoは出力にDC成分が出ない様にする回路です。
トロイダルトランスの大きな突入電流に加えて大きな電解コンデンサーへの突入電流でFuseが切れるのを防止するための回路がSoft Start Timerの部分です。
約0.6秒で電流抑制抵抗が短絡されます。
電源のオンオフ時のスピーカーから出るPopNoiseを防止するための回路がMuting Timerの部分です。Tipが検出する異常信号(HMUTE)が出ていなければ、約6秒でスピーカー用リレーがONします。TipからHMUTE信号が出ると、スピー カーリレーはOFFします。電源投入後、このリレーがONするまでの間、ミュートランプは点灯し、準備中(Ready)を示しています。もし、こ のランプが消えなければ、それはTIPが過電流、過電圧や出力にDC成分が検出されたときなどの故障を検出していることになります。
接 続図はこちら

製作したAMPの構造

AMP15Photo左 写真はAMPの全景です。左側が前面パネル、右側が裏面パネルです。全体を3つのBayに仕切ってあります。左側のトランスBay、右上の電源制 御Bay、右下のAMP Bay。下の3枚の写真は各Bayの拡大です。

『トランス Bay』
2個の大きな円がメイントランスとして使用するトロイダルトランスで、重量配分という後付けの理由で2個使用しています。本当は450VAのトラ ンス1台より、225VAのトランス2台の方が安価だったのです。
重量物なので、工作を簡単にするため3tのアルミ板サブシャーシーに2台のトランスを取り付け、その間にネジ端子台を設けました。この端子台を 使って、2台のトランスの1次巻線(4回路)の並列と2次巻線(4回路)の2回路分ずつの直列処理をしてあります。高圧、大電流なので、これらの 配線処理は圧着端子を使用しました。

『電源制御 Bay』
このBayは2段構造になっています。写真では見えませんが、1段目はHead Amp用の補助電源トランスと整流回路(ダイオードと電解コンデ ンサー)と、AC入力回路のAC Filterが、2段目には電源制御基板、側面にはソフトスタートリレー基板を設けてあります。

『Amp Bay』
このBayも2段構造になっています。1段目はAMP15基板本体、2段目はHead Amp基板、そして背面パネル内面には出力リレー基板を設けてあります。

TransPowerControl











Amp





















Soft StartとMutingの回路

回 路図はこちら

Power Control PCB左図はSoft Start回路とMuting Control回路の基板です。

 
『回路設計の前提』


1)主トランス以外に補助トランスや補助巻線が不要であること。
2)電源SWを入れ放しで外部電源だけでの入り切り可能なこと。(プリアンプなどの機器のControl outletを使用して、プリアンプとメイン アンプが連動で電源を入り切りすることを想定) これは、タイマー用コンデンサー放電用として電源SWの補助接点を利用しな いということ です。
3)Soft Start と Muting に二つのタイマーがあります。どちらもOn Delay Off Quickであること。これは電源が立ち上がる過程で  電源SWをパチパチとしても、途中からタイマーが始まらない様にするためです。
4)Tipから出力される異常信号(HMUTE)でスピーカーリレーがOFFすること。
5)電源が混触しないこと。アンプにはいろいろな電源ラインがあります。これら同士や信号との混触に注意を払います。


『交流電源有無 検出回路』
交流電源有無を応答性よく検出することは難しいことです。電源回路にリレーを入れたり、電源SWを2回路型にして片方の接点を利用したりします が、後者は上記2)の理由で使えません。
今回は汎用のタイマーIC、555のData Sheetに記載されている、連続パルスの歯抜けの検出回路を使いました。交流電源を半波整流、波高をクリップして電源周波数のパルス列を作り、この歯抜け検出回路に入れ ます。電源有無は電源周波数の1サイクル以内で検出できることになります。必要は感じませんが、両波整流すれば、1/2サイクル以内で検出できま す。

『タイマー回 路』
時間的な精度は必要ないので、汎用のコンパレータICを使ったCRタイマーにしました。On Delay Off Quickを実現するために入力が無い時にCを放電する回路を加えてあります。

『信号絶縁』
混触防止のために、交流信号入力、MUTE信号出力とHMUTE入力の各信号系はフォトカプラーで絶縁しました。

『シミュレー ション』
この回路自体の電源回路の立ち上がりと同時に、必要とする機能が間違いなく動作しなければなりません。これを間違えるとリレーのチャタリングなど が起きてしまいます。これを入念にシミュレーションで確認しておきました。シミュレーションでチャリングなどを確認したら、電源回路のコンデン サー容量やSoft Start回路のタイマー時間の調整が必要かもしれません。

Head AmpとDC Servoの回路

回 路図はこちら
DCサーボ基本こ の基板『AMP15』は一般的なメインアンプの電圧ゲイン(Max出力の時の入力は500mVから1V)より少なめでしたので、2.5倍の Head Ampを入れる事にしました。このAmpを利用して、『AMP15』への出力を2.5V オフセットさせて、コンデンサーレスを図りました。さらに、スピーカー出力のDC成分を除去するためにDC Servo回路を構築しています。
左図はHead AmpとDC Servo回路の基本部分です。-AのAmpが基板『AMP15』に相当します。バッテリーで書いた電圧がHead AMP出力にオフセットを与える部分です。DC Servoとは交流信号を積分回路に通してDC分を検出し、Head AmpにフィードバックさせてDCオフセットを除去します。積分回路の入力はスピーカー出力ですが、 ハイパワーで高電圧であるため、分圧回路を設けてあります。また、パワー系グランド(PGND)と信号系グランド(AGND)をインタフェースす るために差動入力積分回路としてあります。この積分回路にはオフセット調整機能を付けてありますが、低オフセットのオペアンプの使用が良いかもし れません。

HeadAmp左 の写真は電源部分も含むHead AmpとDCServo回路の基板です。


『電源回路』

Tripath TA3020ベースのAmpでは各種電源を必要としていますが、特にパワー用の電源のアース(PGND)とアナログ回路用の電源のアース(AGND)が分離されていること に注意が必要です。HeadAmpとDC Servo回路の入力はスピーカー出力ですから、これはPGNDの回路、一方Head AmpはTA2022のアナログ入力に接続されますのでAGNDの回路になります。スピーカー出力を差動増幅型にし、フローティングさせることにより、左記の回路の電源は AGNDのグランド回路になっています。3端子レギュレータによる電源を作りました。

将来、このAMPをパワーIVCまがいにしたいと思い、電流竜力用AMPも設けてありますが、現状、使用していません。






シミュレーション

DC 化部分のシミュレーションはこちら(PDF)
Soft StartとMuting部分のシミュレーションはこちら(PDF)

1)LTSpiceによるシミュレーション回路で、標準で備わっているデバイスモデルの他、ネットで入手したモデルを使用しています。
2)DC化のシミュレーションでは2系統の接地があります。この2つの接地電位の関係をうまく表せませんでした。よって差動増幅器の絶縁特性をシ ミュレーションできてはいません。
3)AMP15基板回路は理想化したアナログモデルです。また、T-ClassAMP TIP (TA3020)のMuteとHMuteの関係はDataSheetのコメントでモデル化してあります。
4)これら2つの回路群の機能確認するためのシミュレーションです。このままの回路で直接製作して、電流入力以外は動作上の問題はありませんでし た。
5)出力電流検出回路がシミュレーション上にありますし、実際の回路も設けましたが使用していません。パワー制御型を指向したのですが、実際はア ンプ出力に当然ながら、多くのノイズ成分が含まれます。アナログ化するための高速で適切なFilterを考えなければなりません。これからの課題 です。



パワー制御AMPへの試み

Power制御一 般的なパワーアンプは定インピーダンス負荷時に入力電圧に対して出力電圧は比例します。ところが負荷であるスピーカーのインピーダンスは周波数に より変化し、一定ではありません。最近、電流駆動のアンプが専門誌などのより、紹介されています。次元の違う音になるそうです。電流駆動というこ とはスピーカーのインピーダンスが変化すると、電圧はインピーダンスに比例するということになります。これを実現しようとすると、アンプの出しう る出力電圧が大変大きなものが必要になります。インピーダンスが倍になれば、電圧も倍必要ということです。所有しているアンプで一番パワーの大き な、すなわち出力電圧もおおきなこのT-Classアンプで実現できないかと考えました。それでも、電流駆動には不足しますので、中をとってとい うのも変ですが、パワー駆動を考えたわけです。アンプをパワー駆動にするためには、パワー検出が必要になります。この回路を高速で簡単に行うのは 困難なので、電圧フィードバックと電流フィードバックの両方で、それぞれのゲインを調整し、パワー制御まがいにしようかと思い、シミュレーション を実施しました。これが左図です。

横軸は負荷抵抗(4~32ohm)、
P(青)は出力(Power)、I(赤)は電流ですがスケールが見にくいので10倍で表示、e-peak(緑)は電圧を表示しています。
これは前述のシミュレーションで電流フィードバックを接続したものです。(電流出力をA点に接続する)
シミュレーションでは実現できることになりましたが、アンプ基本部が、理想アナログアンプであるがゆえの結果です。実際にはデジタルアンプ本質の 特性から実現できません。高速な適切なフィルターで解決できるかな、思っていますが、今後の課題です。


性能測定

前作では、メインアンプの基本である、周波数特性や歪率特性を測定しましたが、今回はシンクロスコープなどにより、正常動作を確認したのみで す。現在は主にWoofer用として使用していますが、Full Rangeで使ってみると、わりと特徴のない音質です。

特性を測定しなかったのは、Filterを通して、周波数特性を測っても意味がないような気がしてきましたし、歪率測定にしても、高調波分が カットされ、見かけ上よい結果になってしまうと思えたからです。オーディオアンプですから、聴いた時の感覚が一番でしょう。



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