XR2206のData Sheetを 読む

DataSheet に記載の高性能バージョンを基本とし、設計します。高性能バージョンとは波形の対称性と歪率調整が可能なものです。左図はDataSheetの抜 粋ですが、これらによると、1)周波数設定の抵抗値Rは周波数帯域により、最適値の範囲が変わる、2)低歪率を得るためにはRの最適範囲がある  3)低歪率を得るためには出力電圧が0.5Vがいいらしい 4)100kHz以上では低歪率は期待できない、などが分かります。















設計

基本はDataSheet記載の高性能バージョンですが、下記についてアップグレード?をしました。
1)手持ちのSparkFun製のカウンターを付けて周波数設定をし易くしました。
2)今は必要としない三角波、矩形波は外部出力はしていません。スイッチと出力端子だけを加えれば、回路的に具備していま
 す。ファンクションジェネレータとは言えないかもしれませんね。
3)出力バッファーの付加と電源の中性点をバーチャルグランド回路としました。
4)これからがメインアイテムです。周波数設定回路は電圧制御型(VCO)にしました。これにより周波数設定VRの目盛は周波数
  リニアになります。VRをAカーブにすることで周波数特性をグラフ化する時に便利な、対数的な目盛にもできます。現在は付
  けていませんが、Sweep回路も簡単になります。

①左は基本形でF=1/CRで周波数が決まります。
②XR2206のTR1は固定の電圧(3V)になっていますから、TR1からグランドに流れる電流に周波数は比例します。よって、Rにかかる電圧 を制御すれば周波数を変えることができます。これを示したのが上記の2)電圧制御型です。2)のように別電源eを用意すると周波数は3-eに比例 し、ちょっとめんどくさいことになります。
③電圧比例にするためには電圧の0基準はTR1の電位でなければならないので、工夫した回路が3)の回路です。
④OP1は高インピーダンスのバッファーで、その出力はTR1の電位(3V)です。高インピーダンスでないと、TR1から見ると電流が増え高い側 へ周波数設定の誤差が出ます。
⑤OP1の出力を分圧してOP2のバッファーを通してRに電圧を与えます。Rに与える電圧は設定誤差が無くなるように充分低いインピーダンスでな ければなりません。電圧設定のリニアリティーを考えるとOP2はできるだけ高い入力インピーダンスが欲しいところです。OP1、OP2ともに 3VDCの回路ですから2回路、低電圧動作、Rai-to-Rail(Fullswingとも言う)、FET入力のオペアンプを使います。
⑥設定VRの上限側にはダイオードを入れてグランド電位から0.6V程度浮かせます。OP2の負電源をグラン ドにすると、Rail- to-Railを使っても出力 をグランドまでは振ることが出来ないためです。設定VRの下限には半固定のトリムポットを入れ周波数の可変範囲を調整します。TR1 を基準にするとVRの上限側は⁻2.4Vで、下限側-0.24Vにトリムポットを調整すれば周波数可変範囲は1桁となります。-0.024Vに すれば2桁ですが、この辺が限界でしょう。
⑦周波数ノッチは1桁単位にしました。6ノッチのロータリーSWでCとRを切り替えます。6個のRは独立のトリムポットです。Cも1桁単位 (10u、1u、0.1u・・・・・)ですが、一番高い周波数レンジのみ220pにしてあります。これは上記データシートFig.5で記載の最適 抵抗範囲すなわち最適電流範囲があるためです。最高周波数レンジ以外はRは理論的には共通でもいいのですが、Cは誤差が大きいのでこれを補正する ために全部のRを可変としました。



製作


左は内部です。小さいPt板 はカウンターで、右のユニバーサル基板が製作した発振回路基板で、タカチ製の TNF59⁻94(59X94mm)の両面ユニバーサル基 板を使いました。この2つの基板はサブシャーシーに乗っています。このサブシャーシーの反対側の面にはカウンターの表示部が付いています。電源SWは付けませんでした。

右は外観です。見た通りですが、パネルは厚手の用紙にインクジェットで印刷し、その上に透明の『プラバン』(タミヤ)でカバーしました。サブ シャーシーを取り付けるネジと共締めです。


調整

① 周波数設定の調整
配線に間違いなければ発振します。(TTL出力をオシロで観る) もし発振しない時は振幅Adj.を廻してみます。周波数レンジを3、周波数設定 (粗)をCCW一杯、周波数設定(精)は中央にして発振周波数が1kHzになるよう周波数設定抵抗(3ノッチの)を調整します。次に周波数設定 (粗)をCCW一杯に廻し周波数トリムで周波数が100Hzになるよう調整します。

次に他の周波数レンジも調整しますが、周波数設定抵抗のみ調整し、周波数設定(粗)のCCW一での周波数を書き留めておきます。CCW端で 1/10以下で最も低くなっているレンジで再度、1/10になるよう周波数トリムを調整します。これで全域がカバーできるようになりました。

②サイン波の歪率調整
周波数レンジを3、周波数設定(粗)をCCW一杯、サイン波/三角波切り替えをOFF、LEVELをCW一杯にして出力をオシロで観測し ます。周波数設定(精)で微調ができるかも確認しておきます。

左 図は上図のTTL出力(赤)と出力(青)の波形です。いずれもDCで観ていますので、TTL出力は0-5V、出力は6Vオフセットした波形になっ ています。VR2206は単電源で使用していますのでGND基準ではオフセットします。(VGを基準とすれば電圧対称になります。) VG-出力 間の波形を見ながら振幅Adj.を廻して振幅を大きくしていくと波形がクリップしていきますので、+側とー側が同時にクリップし始めるように対称 性Adj.を調整します。これで対称性の調整は終わり。







次にサイン波/三角波切り替えをONにします。
左 図は上図のTTL出力(赤)と出力(青)の波形です。出力波形はACプローブにして見やすくしました。波形を見ながら歪率Adj.を廻して正弦波っぽく見えるよう調整しま す。以外と見た目でぽく見えるときは1%以内に入っているようです。この時振幅Adj.も廻してみてぽく見える点を探してみます。今回は歪率がよ かったのは振幅ピークで1.5~3V程度でした。










上の左は100Hz、右は1MHzの波形です。サイン波は意外と1MHzでもそれらしい形です。ただ、TTL出力波形は相当鈍っています。

  左図は1kHzで『WaveSpectra』を使用して歪率を計測したものです。見えにくいのですが、THD=0.48%と表示しています。 測定条件は22050S/S FFT;4096 Hanning。













作ってみて

ほぼ期待の性能が得られました。弁当箱スタイルの外観で使い勝手は悪くはないのですが、しまう時に積み重ねられず置き場に不自由してます。
発展形としてのSweep機能は、この周波数設定回路により、精度高く作ることができます。鋸歯状波発振回路をつければいいだけですから。


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